「ひとつだけ後悔があるとしたらハイコーフェスを復活できなかった事です」

ハイコーフェスの復活を望む声は多くありますが、

ハイコーフェスを自らの手で復活させようとしていたのは、

トムボウイズだけだと思います。


トムボウイズが解散を発表する二日前の事です。

ボーカルのヒナさんからメールが届いたのです。

ハイコーフェスが終わった2018年以降、

誰も触れる事さえ許されない、

痛々しいまでの君とボクのハイコーフェスの最後でした。

にも関わらず、

どんな想いでこんなメールを送ったのでしょうか?

ただ単純に言い間違いくらいのものだったのでしょうか?

それとも「もう一度あのステージに立てなくて残念です」くらいの、

軽い社交辞令だったのでしょうか?

いずれにせよ、

決してトムボウイズが「ハイコーフェスを復活させるために解散した」なんて、

デタラメで大袈裟な作り話を書きたい訳ではなく、

でも今こうしてバンドを解散させるという大きな決断をした時に、

「後悔」という言葉をハイコーフェスに残して、

このまま「想い出になろう」としているトムボウイズが、

バンドの命と引き換えに、

最後にもう一度ハイコーフェスを復活させようとしている様にも思えて、

いてもたってもいられない気分になったのです。


最後のハイコーフェスが終わった時に、

打ち上げの席でマドカさんから言われた言葉があります。

「ハイコーフェスの意志は必ず私たちが引き継ぎます」

あの時はそんなに深く考えなかったけど、

今思えばそう言う事だったのかも知れません。

トムボウイズはどうにかしてもう一度、

ハイコーフェスをやりたかったんだと思いました。

しかも、真剣に。


そう言えば、

「思い込みが激しい」で有名でしたねハイコーフェスって。

それはきっと妄想だったのかも知れません。

それはきっと気のせいだったのかも知れません。

自惚れだったり自意識過剰だったり、

何でもかんでも主人公補正を掛けちゃう、

いつもの悪い癖だったのかも知れません。

でも「そんな勘違いの全て」こそ、

トムボウイズが愛してくれた「ハイコーフェスだった」はずで、

人の気持ち考えられないくらい好きで好きで仕方ない、

トムボイズからこんな風に「剥き出しの愛」が届いたものだから、

とうとうボクも「覚悟」を決めれた気がするんです。


いつ以来でしょうか、

ちゃんと「ボクのしあわせをひきかえにしたい」と思えたんです。

ちゃんと心が動いたって言うか、

後悔したくないなーと思ったんです。

もしも今はまだどのくらい先か検討もつかないけど、

もしもこの先いつかハイコーフェスが復活できたとしても、

そのステージにはトムボウイズの姿がなくて、

それを想像しただけで胸が張り裂けそうで、

そう思うと「もし」があるとした今しかなくて、

今やらなかった絶対後悔するなーと思ったんです。

トムボウイズを秋田に呼ぶしかないなーとそう思ったんです


「解散前に最後にもう1回、秋田でライブをしませんか?」、

「オレと近江さんと澁谷くんで企画してトムボウイズが出演してたら、それはもうハイコーフェスですから」、

もちろんトムボウイズからの答えは「YES」で、

あの時点ですでに解散まで残り2ヶ月しかありませんでした。

そんな状況で誰が秋田も解散ツアーに追加されると予想出来たでしょう?

「普通」の感覚なら諦めちゃうと思うんです。

呼ぶ方も呼ぶ方なら、来る方も来る方なんです。

それでも声高らかに「もちろん」って書いたのは、

それくらいトムボウイズが「アホ」だからって事で、

とても普通の気持ちではいられなかったんだと思うんです。

普通の感覚が通用しない「得体の知れない何か」が生まれて、

そうじゃなければハイコーフェスなんて出来っこなくて、

あの頃ボクらはそれを「奇跡」と呼んで喜んでいたはずで、

そういう「普通じゃない事」がちゃんと起きているんだと思いました。


ボクはバカです。

そしてトムボウイズはアホでした。

でもハイコーフェスのあの奇跡みたいな1日って、

そんな「バカ」や「アホ」がいない事には絶対に成り立たなかったはずで、

そんな訳で無事にこうして、

「あんなバカ」や「こんなアホ」のおかげもあり、

トムボウイズが最後にもう1回だけ、

秋田でライブをする事になったのです。

これが真実、嘘のような本当の話です。


今回のこのイベントは、

正しくは「トムボウイズ解散ツアー秋田公演」なのですが、

「ハイコーフェスの気持ち」で企画しています。

もちろん廃校で開催する訳でもないし、

そもそも出演バンドも1組だけでフェスでもないんだけど、

ボクと近江さんと澁谷くんとトムボウイズが関わって企画するんだから、

これはもう絶対にハイコーフェスな訳で、

こんなに簡単に「ハイコーフェス」って言葉を使ってしまったら、

「今までの全てが台無し」になるかもですが、

「今までの全て」を引き換えにしてでも、

「今までの全て」を台無しにしてでも、

剥き出しの愛には剥き出しの愛で応えたいと思ったんです。


「ハイコーフェスやってください!」

「やってください、必ず!」

ヒナさんから送られて来たメールの最後には、

こんな一文が付け加えられていました。

今ボクらが一生懸命やろうとしているこのイベントは、

ヒナさんの求める「それ」とは違うのかも知れません。

でも、わざわざこんなバカバカしい記事を読んでいる物好きなあなたの愛があれば、

ハイコーフェスを愛する皆さんの愛があれば、

多分きっと絶対に、

ハイコーフェスみたいな奇跡が起きる自信があるので、

「ボクが思いつくだけの事が起こるだろう、君が信じられるだけ全部叶うだろう」なので、

なので一緒に「トムボウイズのハイコーフェス」を作りに来て欲しいんです。

もしもあなたがハイコーフェスを愛しているなら、

もしもあなたがハイコーフェスの復活を願うなら、

今回のこのドラマを見逃しては絶対後悔すると思います。

この物語はきっと、

「この先のハイコーフェス」に続いているはずなのですから。


「根性」があるのでトムボウイズは、

意地でもボクらを楽しませてくれるはずなので、

なのでボクらも、

意地でも笑って終わりにするつもりです。

トムボウイズに涙の別れは似合わないでしょ?

だってハイコーフェスとトムボウイズの合言葉は、

「ボクは君を楽しませたい、君はボクを楽しませてくれる」なんですから。


この夏、夏の最後の日、

最も暑く、最も眩しいはずのその日、

トムボウイズが解散するそうです。

あんなに好きだったのに、

こんなに好きなのに、

ハイコーフェスで見るこれが最後のトムボウイズになるそうです。


東京で見ても、神戸で見ても、どこで見たって、

「最後のトムボウイズ」が素晴らしいのは分かりきった事ですが、

ハイコーフェスにしか見せない「最後のトムボウイズの姿」がきっとあるはずなので、

できれば「それ」を皆さんにも見て欲しいんです。


ハイコーフェス史上、最も多くの人から愛されたのは間違いなくトムボウイズで、

恋焦がれた1つの恋が終わる気分です。

どうせ恋が終わるならせめて夏にしておくれ。

さようなら、大好き、トムボウイズ。

愛に溺れて死んでくれ。

愛に溺れて。


元ハイコーフェス代表

進藤直樹